変化し続ける市場のニーズを読み
中間層をターゲットに物件を供給

不動産投資グループのクリードホールディングス。ベトナムでは主に地場デベロッパーのアンギア社と提携し、低所得者層~中間層に向けてコンドミニアムを提供している。2019年5月に発表された7件目のプロジェクトについてのほか、これまでの歩み、今後の展望や目標を聞いた。

投資ではなく実需を満たす
Bクラス物件を中心に提供

――ベトナムに進出した経緯を教えてください

山口 クリードグループは2012年から東南アジアを中心に不動産投資を始めています。ベトナムは2012年ごろから景気が上り調子になりつつあった一方で、2014年は建設が途中で止まっている案件がいくつかあり、既存のデベロッパーがプロジェクトを再始動できずにいました。資金ニーズの高まりに伴い、停止中のプロジェクトを動かさないかという話が持ち掛けられたことが、ベトナムに進出するきっかけでした。現在は東南アジア8ヶ国とバングラデシュで投資事業を行っています。ベトナムは主力となる国の1つであり、好調な市場と言えます。

ただ、最初からベトナムの市場に手応えを感じていたわけではなく、日本とは大きく異なる商習慣や、開発の手順、法制度などに対して非常に苦労しました。その点で、進出当初に提携した地場デベロッパーとは、ずっと一緒にやっていくのは難しいかもしれないという思いがありました。その後、ホーチミン市中の不動産関連会社やモデルルームなどに足を運び、出会ったのが現在プロジェクトを一緒に進めているアンギア・インベストメント社(以下、アンギア社)です。アンギア社の社長は販売員からデベロッパーに転身という経歴であるため、どういった商品に需要があるのかや、販売員の思考を熟知しており、販売力が非常に強いことが特徴です。かつ、プロダクトへのこだわりも強いので信頼を置いています。

――5月に7区の集合住宅「シグニアル」が発表されました

山口 弊社は低所得者層〜中間層のベトナム人に向けて、実需を満たすBクラス(ミッドエンド)の物件を供給しています。「シグニアル」もBクラスに該当し、2人暮らしの夫婦や1人暮らしを対象に、1戸あたりの延べ床面積が30〜40㎡程となっています。通常弊社のプロジェクトの購入者の7割以上が実需を占めますが、本プロジェクトに関しては1ユニットあたりのグロスの価格が小さいため、投資用に購入する人も目立ちます。

全プロジェクトを通じて、最新のテクノロジーを導入することだけが、 日本品質 ではないと考え、弊社はベトナム人のニーズを満たすということを重要視しています。工期を守るなどの管理や運営面、高いデザイン性、モデルルームでの販売員の接客に至るまで、細やかな部分で日本的な質の高さを感じてもらえることが大事だと思っています。

――ベトナム市場の特徴は

山口 中間層や低所得者層の購入力が非常に高いことが挙げられます。7区の弊社プロジェクト「スカイライン」に住む家族に物件を購入した理由を聞いたところ、子どもの教育のために7区で物件を探していて、広さと予算が合致したことが決め手だったと言っていました。ベトナム人は手堅く、しっかりとした経済観念を持ち、物件の細かいところまで見るため、いずれのクラスの物件の質も高いです。フィリピン、タイ、インドネシアなどの場合、中間層と富裕層の差が非常に大きいために、中間層〜低所得者層に「悪かろう安かろう」という物件が大量に供給されていると感じます。

ただ、住宅ニーズが高まる一方で、土地の価格が年々上昇し、デベロッパーの利益を圧迫しています。販売価格が上がり、購入しづらくなってしまうことが目下の懸念事項です。

パートナーと共に成長し
着実に経験やノウハウを蓄積

「シグニアル」の外観。すでに着工しており、2022年6月に竣工予定

――アンギア社との関係性において重要視していることは

山口 顔を合わせてのコミュニケーション頻度を増やすだけでなく、問題が起きたときに、私が納得できるまでしっかり説明してもらうようにしています。市場のスピード感に遅れないように、判断には瞬発力が必要です。その点、私が決定権を持ち、素早い対応が可能という点が強みと言えます。一方で、しっかりとしたプロセスを経てもらわないといけないということも理解してくれているので、互いにプロフェッショナルとして成長できたと感じています。

アンギア社が順調に成長し、2015年の税後利益は約20万USDだったのが、現在約1500万USDまで急成長を遂げました。今後はアンギア社を株式上場させ、コンスタントに年間3000〜5000戸を供給できる会社にしていきたいと考えています。

不動産事業は物件を作るだけでなく、資金をどのように回していくかが重要です。その点において、日本とベトナムではまったく勝手が異なるため、この5年間で実践を通じて学び、積み重ねてきたノウハウには自信を持っています。

――今後の計画や展望を教えてください

山口 第2のアンギア社となる新しい会社への投資を考えています。ハノイへ進出するパートナーも、アンギア社か、または新しいデベロッパーか検討段階にあります。

今後もベトナムをはじめ、東南アジアの国々で中間層をターゲットに質の高い住宅を供給していくことを目指していきたいですね。

COMPANY INFO
東南アジア不動産市場を中心に事業を展開する日系不動産投資グループのベトナム駐在事務所。2014年に設立され、2015年に地場アンギア・インベストメント社と業務・資本提携契約を締結した。2019年5月にベトナムにおける7件目のプロジェクトを発表した。
駐在事務所長  山口 真一.
1978年生まれ。大学卒業後、クリードグループに入社。2008年に退社し、その後フランス系資産運用会社にてファンドマネジャーを務める。ベトナム駐在員事務所の立ち上げに伴い、クリードグループに再入社し、2014年より現職。