文:杉田憲昭(GRAFICA)

「オフショアは安かろう、悪かろう」
その概念をベトナムから変える

ソフトウェアテストや品質保証のプロフェッショナル集団として、IT分野における第三者検証をリードする「シフトアジア」。「Crazy for Quality」をスローガンに、ベトナムから世界のオフショア開発を支える伊藤氏に、同社の強みと未来への思いを聞いた。

日本語対応のエンジニアが
高品質のもの作りを支援

――ベトナム進出の経緯を教えてください

伊藤 日本では昨今、2025〜2030年には数十万人ものITエンジニアが不足すると言われています。そこで弊社では世界には日本人と同等、またはそれ以上に優秀な人々が多くいることに注目し、2016年に初の海外開発拠点をホーチミン市に開設しました。
 
当初は他国の候補もありましたが、ベトナムはITエンジニアの育成を国策のひとつとしていて、2030年には150万人のIT人材輩出を目指すほどのIT立国。また、勤勉で真面目な国民性や、過去数年で日本語学習者の伸びが数倍に増加するなど日本への興味や理解度も高い。弊社の主なお客様やマーケットが日本ということもあり、日本との親和性を重視してベトナムを選びました。

――ベトナムにおける
オフショア開発の特徴は?

伊藤 ベトナムには高い技術を持つIT人材が揃っています。特にスマートフォン世代の若いエンジニアが多く、今のニーズに即した最新技術を持つ人材については、日本よりも数が多い印象です。また、転職文化があるため人材の流通が活発で、日本ではなかなか出会えないような優秀な人材を確保しやすいこともベトナムの利点と言えます。

一方、年々増加しているとはいえ、日本語ができるエンジニアは、中国などと比べると、まだ多くありません。オフショア開発会社では社内に翻訳者を置き、基本設計からテストまで、ほぼ全ての工程をベトナム語に翻訳し作業を進めるのが一般的です。しかし、翻訳により誤訳や情報欠如などのリスクも発生します。
 
弊社では日本語ができるエンジニアの積極的な採用や独自の採用ルートを構築、大学入試レベルに相当する日本語能力試験N2以上を持つ社員が半数以上を占めています。
 
オフショア開発ではお客様といかにスムーズにコミュニケーションを取れるかが業務のカギ。日本語能力に長けたエンジニアが日本語の設計書を読み、日本語でテストし、日本語でお客様に結果や課題をご報告できる環境を整えています。

2021年5月に創立5周年を迎えた。設立時は20名ほどだった社員も5年間で9倍、約180名が在籍するまでに急成長した

徹底した品質管理で
お客様の期待値に応える

――「日本品質・品質保証」を生み出す取り組みとは?

伊藤 開発において品質に悩むお客様へ、課題解決のパートナーとしてしっかりとした品質のサービスと安心をお届けすることが弊社の価値であり、ミッションだと考えています。
 
それを可能にするのが親会社であるシフト(SHIFT)が開発したテスト管理ツール「CAT(キャット)」です。テストと言っても、スマートフォン用ならこの項目といったように、要件によって検証する項目が異なります。そこでテストのノウハウをデータとして集約・蓄積できるCATを用い、要件に適した重要なポイントを重点的に検証する標準化手法を導入。これにより、効率良く網羅性の高いテストを実現できるようになりました。

各人の功績をたたえる社内表彰。和気藹々とした雰囲気も魅力

 
また、ヒアリングを通じてお客様が重要視される点も洗い出し検証するなど、お客様の期待値に沿うサービスを心がけています。テスト後の検証結果の報告では、問題点や改善点の分析を加えています。何が問題で、どこを改善すると良くなるなどの直接的な原因はもちろん、潜在的な理由、つまり同様の障害が今後起こらないためにはどうすべきかまで掘り下げてご報告しています。

システムは単に正しく動けば良いというものではありません。開発やテストの過程でのコミュニケーションの不安をどのように取り除くか。要件や予算に合わせた効果的な検証で、どこまでお客様の期待値にお応えできるか。ソフトウェアテストの専門会社として、品質は何より意識すべき部分。それこそが日本品質であり、私たちの存在意義だと思っています。

――今後の展望を教えてください。

シフト(SHIFT)が開発したソフトウェアテスト管理ツール CAT

伊藤 近年は弊社の土台とも言える高い品質をもとに、受託開発業務にも業務の領域を広げています。特に設計から開発、運用までの全工程を手がけられるフルスタックエンジニアが弊社には多数在籍しています。開発時には、まずシステムの概要を把握するためのモックアップを制作し、先に内容を明確にすることで、ご要望に沿った成果物を効率的にご提供できるのも弊社の強みと言えます。
 
また、しっかりとした品質管理の下、テストや開発の手法を組織化して行うことで、オフショアでも品質の高いソフトウェアの開発が実現できることを示していきたいと思っています。
 
そうした実績を積み重ねながら、「オフショア=安かろう、悪かろう」という先入観をベトナムから変えていきたい、というのが個人的な信念です。
 
その先には、弊社の成長とともにベトナムのエンジニアの人々が日本と変わらない報酬を得られるような世界を目指していきたいとの思いがあります。もちろん簡単なことではありませんが、業界の常識に縛られず、常に新たなチャレンジを続けることが大事だと考えています。

COMPANY INFO
情報・通信・金融・医療など多岐に渡る業界向けにソフトウェアの品質保証やテストを行う「株式会社シフト(SHIFT)」の海外拠点として、2016年にホーチミン市に設立。高品質のマニュアル・自動化テストのほか、品質保証の知見を生かしたオフショア開発にも取り組んでいる。
CEO 最高経営責任者 伊藤 隆介
RYUSUKE ITO
1979年埼玉県生まれ。日系大手システムインテグレーターにて、システムエンジニア、プロダクトマネジャーとして活躍。海外拠点の設立に携わった後、2017年より「株式会社シフト(SHIFT)」に参画。国内外拠点のマネジメントのほか、2019年よりベトナム法人代表を務める。