日本で築いてきたハウスの味で
ベトナムの家庭を幸せに

「食を通じて家庭の幸せに役立つ」を企業理念に掲げる「ハウス食品」は、2012年に「ハウスフーズベトナム」を設立。2018年からカレーの販売を開始し、2020年にはキッチンカーでカレーライスやカレーパンを移動販売する普及活動を展開している。

現地市場に合わせた
商品で事業を開始

――2012年のベトナム進出の背景について教えてください

中谷 ベトナムより前に弊社は1997年に中国に進出し、海外でのカレー事業を開始しました。「バーモントカレー」をはじめとする日本式のカレーは好評で、中国の一般家庭にも浸透しつつあります。このビジネスモデルを東南アジアでも、というのが最初の発想でしたが、ベトナムやタイには独自のカレー文化があり、スーパーマーケットも少ないため、中国と同じ戦術での展開は難しいと判断しました。
 
2013年当時のベトナムには加工調味料やレトルト食品がほとんどなく、粉末の商品が多かったため、「プリンミクス」や「シャービック」といった粉末デザートからスタートしました。忙しく働くお母さんやお父さんが子どもたちのために簡単に手作りできて、安心して食べられる、家庭用のデザート商品です。

――2018年にカレーを販売した理由は何ですか?

日本でロングセラーのカレールウ「ジャワカレー」。ベトナムではレストラン向け業務用製品として展開

中谷 寿司やラーメン、ピザやパスタのような新しいメニューがようやくベトナムでも定着し始めた頃であったこと、そしてグループの「CoCo壱番屋」が出店するタイミングであったことも契機となりました。連動して日本式のカレー市場を創造すべく、日本食レストランやカフェ向けに業務用カレールウの販売を開始しました。味はローカライズせず、まずは日本のカレーのおいしさをそのまま提供することにこだわりました。

――売り上げはどうでしょうか?

中谷 販売開始から3年が経ち、日本式のカレーメニューを導入するお店もかなり増えてきました。しかし、ベトナムの人たちにとってのカレーはココナッツミルクで作る、薄いイエローのさらりとしたカレーであり、パンと一緒に食べます。ですから、どろっとした濃い色で、ご飯と一緒に食べる日本式のカレーライスはベトナムの人たちにとって最初は違和感の強いスタイルのようです。日本人が味噌汁とトーストを一緒に出されたような感覚に近いのかも知れません。
 
弊社が2019年に行った調査では、ホーチミン市における日本式カレーの認知度は約30%。食べた経験のある人は7%でした。年々増えていますが、まだ大きくありません。まずは日本のカレーのことを知っていただき、関心を持ってもらうこと、そして一人でも多くの方に実際に体験してもらうことが重要です。ですから、今は地道な普及活動が必要だと感じています。

フードトラックでの販売で
日本のカレー体験を提供

ホーチミン市で展開するキッチンカー。2020年11月に開催された「ポカリスエットラン2020」での出店の様子

――その普及活動のひとつが2020年にスタートした、キッチンカーでの販売ですね?

中谷 はい、そうです。お客様に買っていただくのを待つのではなく、我々からターゲットが集まる場所へ行き、おいしさを知っていただこうというのが目的です。コロナ禍でイベントやスーパーマーケットでの試食活動が実施しにくくなったという背景もあります。キッチンカーの展開はまだホーチミン市のみですが、公園や大学、フリーマーケットなどに定期的に出店しています。「カレーライス」は3万9000VND、「カレーパン」は1万6000VNDと、ファストフード価格に設定し、10代後半から20代の若者をターゲットにしています。ベトナムではキッチンカーは珍しいので、ストリートフードの進化版として注目度は高いですね。カレーパンはカレーとごはんの組み合わせに違和感のある人でもスナック感覚でトライしやすいようで、カレーライスの3~4倍の売上があります。カレーパンも日本式カレーのひとつのスタイルなので、これをきっかけにカレーライスも好きになっていただけると嬉しく思います。もちろん、ベトナム在住日本人の皆さまにも味わていただきたいです。

――今後の課題は何ですか?

中谷 弊社のこれまでのメインチャネルはスーパーマーケットとコンビニのようなモダントレードですが、いまだベトナムではトラディショナルトレードの存在感が強いのが現状です。また、スーパーマーケットやコンビニの発展を飛び越え、近年はより便利なデリバリーサービスの浸透が進んでいます。今後、ベトナムにおける流通インフラはどのように進化していくのか。その変化に合わせて我々のビジネススキームや製品形態を変革していく必要があると感じています。
 
ベトナムの人たちは食堂や屋台をよく利用しますが、夕食は内食率が高いというデータもあります。弊社が長年の経験を積んできた「家庭の味」で、ベトナムの家庭に新しいおいしさと幸せをお届けしたいと思います。

 
 

COMPANY INFO
東京都千代田区に本社を置く、香辛・調味加工食品料や健康飲料の製造販売を行う「ハウス食品グループ」の100%子会社として2012年に設立。ドンナイ省に自社工場を持ち、カレールウや粉末デザートなど製造と販売を行う。
General Director 代表 中谷 清喜
SEIKI NAKATANI
1968年生まれ。1991年にハウス食品株式会社に入社。人事、営業を経て、スパイスや調味料などの商品開発に携わる。2012年海外新規事業開発、2018年よりベトナムに赴任し、現職。