「また来たい」と思っていただける
オンリーワンのパンづくりを

山崎製パンは2016年、「ベトナムヤマザキ」を設立してホーチミン髙島屋に出店。店内で焼きたてのパンを提供する日本式ベーカリー店を展開している。客層の約7割はベトナム人。固定客を飽きさせない戦略を聞いた。

「お客様の声」を聞きながら
日本式ベーカリー店を追求

――主力商品は何ですか

鈴木 当店はホーチミン市の中心地にあるため、地元のベトナム人、駐在員、観光客など、客層は実にさまざまです。国民性によって好みは分かれますが、最も売り上げが高いのは「ハワイブレッド」。この商品はじゃがいもを練りこんでいるので、でんぷんによってもちっとした食感とほんのりと感じる甘さが特徴です。開店当初から販売しており、現在も緩やかに売り上げが伸びています。ほかには「チーズ蒸しパン」と「あんぱん」も売れ筋です。

開店当初は日本人の駐在員のお客様が多かったのですが、2018年くらいからお客様の裾野が広がり、現在は全体の7割がベトナム人、1・5割が日本人という割合です。客単価平均も開店当初の約7万VNDから最近は9万VNDほどにあがり、ベトナムの経済成長を実感しています。

――今年の6月より、一部のコンビニエンスストアで商品の販売が開始されました

売り上げ1位の「ハワイブレッド」。大納言入り、レーズン入りも登場した

鈴木 現在、ホーチミン市のファミリーマートさんで2店舗、ミニストップさんで2店舗、「ハワイブレッド」、「食パン」、「あんぱん」などを試験的に販売しています。最初に販売を開始した「ファミリーマート・サイゴンスカイガーデン店」では、1日で200個のあんぱんを販売した日もありました。ベトナム人の店長さんが「YAMAZAKI」と書いたハチマキを手作りしてくれて、それを巻きながら販売を盛り上げてくれたのは感無量でしたね。

――運営で重要視していることを教えてください

鈴木 私たちが当地でパンを作り販売しているのは、ベトナムのお客様に日本式のパンを食べていただきたいからです。安全・安心な材料でおいしいパンを作ること、お客様が楽しめるような陳列をすること、気持ちのよい接客をすること。すべてはお客様に喜んでいただくためです。 

弊社が行うベーカリー業態は、ヨーロッパのものを日本人が独自に発展させたようなところがあります。商品のおいしさや種類の豊富さはもちろんのこと、焼きたてをその場で試食できたり、食パンを好きな厚さにスライスできたり、日本式ベーカリー店の魅力を損なわないように気を付けています。

当店はいわゆる安売りや販売促進には熱心に取り組んでいません。商品の品質を高めること、そして、パンという枠にとらわれず、和菓子や洋菓子など、我々日本人がおいしいと思うものをどんどんベトナムの方に紹介して、オンリーワンの存在でありたいと思っています。

新商品の企画・開発は頻繁に
ベトナム人のアイデアも採用

パンの焼きあがりの時間がわかるモニターやスライスのサービスは、日本式ベーカリー店ならでは

――食事パンや菓子パン、サンドイッチ、大福など、種類の豊富さも魅力ですが、商品開発はどのように行っていますか

鈴木 弊社東京本社からの情報、または弊社海外他事業所からの売れ筋情報も参考にしますが、我々の経験からこんな商品を作りたいというアイデアを形にすることも多いです。また、ベトナム人スタッフのアイデアも採用しています。当店は固定客のお客様が多いので「え? こんなものもあるの?」と驚かれたり、日本人のお客様からは「これ、昔あったよね」「これが食べたかった!」と言っていただけるような商品を常に考えています。開店から4年が経ち、毎年40~50品の新商品を発売する一方で、お客様に飽きられた商品は改廃しています。

――現在の課題は何ですか

鈴木 ホーチミン市の郊外、また、ハノイなどベトナムのほかの地域のお客様からも「ヤマザキ」が食べたいという声をいただきます。そのような方々にも何とか商品をお届けしたいというのが大きな課題です。

ベーカリーのように機械類が重装備の業態は出店が容易ではなく、またベトナムは賃料が高いので新規出店のハードルは高いですが、今後もできるだけお客様のご要望にお応えしたいと思っています。
 
当店から離れた場所にお住いの方にも気軽に利用していただけるように、日本人の方が多く住んでいるレジデンスへの定期配送サービスを行っているので、今後はこれをより充実させたいと思います。また、ベトナム人のお客様が出張のお土産やパーティ需要などで購入してくださるケースも増えているので、将来的には個人配送も視野に入れていきたいですね。

COMPANY INFO
1948年、山崎製パン設立。海外進出は1981年の香港ヤマザキ設立以来、タイ、台湾、シンガポールなど、世界10の国と地域に262店舗(2020年8月末現在)のベーカリー店を展開。「ベトナムヤマザキ」の設立は2016年。ベトナムでの運営は2020年9月現在、ホーチミン髙島屋店の1店舗。
General Director 代表 鈴木 円
MADOKA SUZUKI
1986年に山崎製パン入社。千葉工場に勤務後、1992年に香港ヤマザキに出向。帰国後、本社営業統括本部でベーカリー店の店舗開発・管理業務、ベーカリー店および洋菓子店運営を経て、2015年にベトナムに赴任。会社設立から店舗開店までの業務を担い、現在に至る。