ニアショア感覚のオフショア “海外で”という不安を払拭

ウェブサイトや業務システムの構築などを行う「再春館システムベトナム」が2020年4月、ハノイに続く第2のオフショア開発拠点を中部地方のフエに開設した。同社代表を務める有馬氏に、その理由や今後の目標などを聞いた。

ベトナム人の勤勉さを伝え
距離感が近い関係性を構築

――ベトナム進出の経緯を教えてください

有馬 日本のIT業界は、2000年代初期までにインターネット・バブル、2006年はライブドア・ショック、2008年はリーマン・ショックといった不況を経験してきました。こういう状況に陥ると価格競争が起こります。加えて近年は人材不足が深刻です。そのような背景があり、賃金など価格の面に加えて人材をはじめとしたリソースの確保でも魅力を感じたベトナムにオフショア拠点を設けました。

――運営で強く意識していることは何ですか

有馬 お客様に弊社のファンになってもらうための仕組み作りに注力しています。日本ではオフショア開発に対するマイナスな印象が強いので、それを払拭すべく、まずはお客様にベトナムを訪れていただきます。日本語が話せるスタッフは積極的に会話に入ってもらい、オフィス訪問以外に会食なども通じて、ベトナム人スタッフの勤勉さ、フレンドリーさを実感していただきます。

一方、実際にお客様とやりとりをするのは必ず日本人スタッフです。それはオフショアのマイナスイメージでもある、行間が読めない、言葉がわからない、商習慣を理解してくれないといった不安材料を避けるためです。このような取り組みがあり、実際に訪問してくださったほとんどのお客様から発注をいただくことができています。
 
弊社の特徴として、離職率が低いことも挙げられます。その理由は、社内でコミュニケーションがしっかりと取れているからだと思います。弊社では月に1回、ケータリングをオーダーして社員全員で食事をとり仲を深めるほか、スタッフの日本とベトナムの行き来も頻繁にあります。お客様にとっても、いつ連絡しても同じスタッフが対応してくれた方が安心です。アットホームな環境でチーム意識も強く、良い信頼関係が築けています。

雰囲気が壊れないようスタッフの増員は少しずつ行い、常に密なコミュニケーションが取れる環境を整えている

先手を打ってフエ拠点を開設
コロナ後に向けた体制も準備

――フエにオフショアの第2拠点を開設しました

有馬 2~3年先だけでなく、先手で5年後、10年後も考えて動くというのが弊社グループの代表の考えです。ベトナム法人が軌道に乗ったところで次の拠点を本格的に検討し始めました。国外にするとハノイで築いたノウハウが全く生かせないですし、国内のホーチミン市やダナンは物価や賃金が上昇しています。そこで注目したのがフエです。安価である点に加えて、視察の際、フエ人は可能なら家族が近くにいるフエで暮らしたいと口をそろえて話していたのが印象的でした。フエは仕事の数が少なく、大都市に出て行く人が多いんだそうです。スタッフには定年まで働いてほしいと思っている弊社と合致しました。また、フエはいち早くスマートシティ化を目指す計画が発表されていたので、現地のフースアン大学などと連携すればIT分野の優秀な人材も確保できると期待が持てました。
 
フエ人はハノイ人と比べると本当に人見知りですが、真面目な人が多いです。IT技術はハノイの方が高いので、最新技術を求められるような業務はハノイで、システムの保守など長期的な案件はフエでといったかたちで分担しようと考えています。

――現在の課題は何ですか

有馬 今後は教育に力を入れたいと考えています。技術はもちろん、マネジメントスキルなど人間的な部分も成長させたいです。私はスタッフによく「1ストライク3アウト」と話していて、1度の失敗で、やっぱりオフショアは、と言われてしまいます。そのようなことがないように1人ひとりの能力を高めたいと思っています。
 

フエオフィスでは、リターン組の確保も視野に入れている。今後は両地域合わせて100人規模の体制を目指す

現在、新型コロナウイルスの影響で案件が減少傾向にあります。そのため、今後は日本だけでなく、シンガポールやアメリカのお客様も増やしていく予定です。弊社には実は、日本語も英語も堪能な中国人スタッフも在籍しているので、彼の力を生かしてまずはシンガポールから営業を開始したいと考えています。

――今後の目標を教えてください

有馬 ベトナムではウイルスや不正アクセスが多いのにも関わらず、セキュリティに対する意識が低いように感じられます。日本法人にはセキュリティ推進室があり、セキュリティ関連商材も扱っているので、それをベトナムで展開していきたいです。 
 
最終的には海外での案件を増やし、逆オフショアとして日本で実装するような環境にまで持っていきたいですね。弊社はシステム開発などのほか、パートナーとして新規事業のお手伝いも可能なので、ご相談などは遠慮なくお声がけください。

COMPANY INFO
東京都港区に本社を置き、ITコンサルティングやシステムインテグレーションなどを提供する「再春館システム」のベトナムオフショア開発拠点。2015年6月、ハノイに設立。ECサイトやウェブシステムの構築といったウェブサービスが中心で、スマートフォンアプリの開発なども行う。
General Director 代表 有馬 健一
KENICHI ARIMA
1975年生まれ。東京都新宿区出身。2003年、再春館システムの前身であるネット情報システム社に入社し、システム営業部に所属。2014年に再春館システム社の役員に就任した。2015年6月、ベトナム法人の設立に伴い現地代表として来越、現在に至る。